TITLE: Arc 9 Chapter 34 - Gravity
FROM: JA
TO: EN
DATE: 2025-05-24

ORIGINAL TEXT:
第九章　『名も無き星の光』
第九章３４　『引力』


　クリンドの『転移』――本人は『圧縮』と説明したそれを体感するのは、ペトラにとってはひと月ほどぶりで、メィリィにとっては数日ぶりのことだった。

「初めてだとビックリするかもしれないけど、怖がらなくていいからね」

　と、経験者の立場から、ペトラは未経験者であるフラムにそうアドバイスする。
　これから起こることについて、ちゃんと教えてあげないとパニックになるかもしれないという配慮だったのだが、それに対し、フラムは「いいえ」と首を横に振り、

「ご心配いただかなくても、大抵の驚きは若様を超えられませんから」

『あいつ、身内からもビックリドッキリ人間扱いされてんの？　どんだけだよ』

　そのたくましすぎる答えに、『スバル』も呆れたコメント。
　ただ、『死者の書』で共有されたスバルの記憶から、ラインハルトが剣の一振りで建物を吹き飛ばし、メィリィの姉を蹴散らしたところをペトラも知っていたので、規格外に慣れ切ったフラムの態度にも納得が強かった。

「フラムちゃんが大丈夫でもお、寝てるセンセイさんが目を回さないといいけどねえ。初めて家令さんに飛ばされたとき、小紅蠍ちゃんは大慌てだったものお」

「そう言えば、転移酔いみたいなのってあるのかな。ヴォラキアでも、スピカちゃんの『転移』が大丈夫な人とダメな人がいたみたいだったし」

　肩をすくめたメィリィ、その髪の毛がもぞもぞと動き、中から姿を見せる小紅蠍が主人の真似をするみたいに鋏をすくめる。
　その指摘に思い出されたのが、帝国に残してきたスピカの『転移』――あれは体質によるものか、強い弱いに拘らず、ダメな人はダメというものだった。ペトラは大丈夫側だったが、ダメ側だったガーフィールは丸まって拗ねていたものだ。
　と、そのペトラの疑問に、「そうですね。思案」とクリンドが指を立て、

「さほど試行回数や試行人数が多いとは言えませんが、これまでに体調を崩された方はいらっしゃいません。安心。『憂鬱』の権能は厳密には『転移』ではなく、本来ならばかかったはずの時間と距離を『圧縮』している結果ですので。省略」

「何回聞いても意味がわからないわあ」

『つまり、キングクリムゾンって認識でいいのか？　いや、間の結果まで吹っ飛ばせるかは怪しいから、キンクリとはまた別か……』

「酔う心配もいらないし、わたしたちが今一番欲しい時間を作ってくれる力。それだけわかってたら、今は十分だよ」

　首をひねるメィリィと、自分流に噛み砕く『スバル』にペトラはそう結論付ける。
『スバル』の言いようは理解できそうではあるのだが、そのために時間と思考の割合を割くのが今は惜しまれる。時間が許すなら、流し込まれた記憶と知識の全部をちゃんと確かめて、スバルのことが何でもわかる自分でありたいが――。

「クリンド兄様、お願いしていい？」

　その願望を満たすどころか、抱く時間ももったいないとペトラはクリンドを促す。
　かけたモノクルのレンズを光らせ、「ええ。適時」と頷くクリンドの応答。これから起こそうとしている現象を思えば、気安すぎて頼もしい態度だ。
　と、そう感心するペトラの袖を、「ねえ」とメィリィが引いて、

「ペトラちゃん、さっきの、対価のお話だけどお」

「――。大丈夫、クリンド兄様のお墨付きだよ」

「そうじゃないわあ。……理由は自分でもわからないけどお、もし、ペトラちゃんが損な思いをしなくちゃいけないんなら、わたし、嫌よお」

「損……」

　自分の感情を持て余している風なメィリィ、その言葉にペトラは目を瞬かせる。
　友人からのストレートな心配と、クリンドから受け取った対価についての評価――このとき、ペトラの胸に去来した感情は彩りの複雑さ、豊かさを極めた。
　その上で、ペトラはメィリィに微笑み、

「ありがとう、メィリィちゃん。でも、本当にわたしは平気だから」

「……嘘だったらひどいんだからあ」

　考えた末に絞り出された脅し、その不器用さにペトラは微笑んだまま頷いた。
　そっと指を放された袖を大事に胸に抱え込み、それからペトラは『スバル』の姿を探した。幻影の彼を置いてけぼりにすることはないだろうが、気持ちの問題だ。
　その半透明の背中を見つけたとき、『スバル』は遠目に砂海を眺めていて。

『俺がもうちょっとちゃんとしてれば、あいつに苦労かけないで済むのにな』

　東の空――大気が悲鳴を上げ、空の色は酸鼻を極め、大地が削れていく音が轟いている戦域では、今も『剣聖』と『嫉妬の魔女』の戦いが続いている。
　世界の趨勢を決めるような、強大な力を持つモノ同士の激突。それに対し、自分の力不足を悔やむ『スバル』の横顔に、ペトラは切なさで息を詰めた。

　友人の身を案じる『スバル』は、直前のペトラとクリンドとのやり取りに触れず、ペトラの意思を尊重してくれている。
　極論、ペトラの頭の中の存在である彼に隠し事なんてできないはずで、その気になれば彼にはペトラが耳を塞がせた情報を丸裸にすることが可能なのだ。
　しかし、イマジナリースバルはそれをしてこない。――それが『スバル』の良識や思いやりによるものなのか、あるいは彼を言いなりにする自分の意思なのか、自意識と愛おしさと記憶が混ざり合うペトラには判別がつかなかった。

　ただ、そのどちらであったとしてもと、そうペトラは思うのだ。
　それが思いやりでも、ペトラが望んだ結果だとしても、『スバル』の在り方はペトラ・レイテの目から見た、本物のナツキ・スバルの見え方を参照している。
　だから――、

「クリンド兄様、お願い」

「――承知しました。称賛」

『スバル』への愛おしさを抱いたまま、ペトラがクリンドに合図する。
　ペトラとメィリィ、それにフラム。竜車を引くパトラッシュと、意識不明のガーフィールとエッゾを合わせ、都合六人の一頭――『スバル』と小紅蠍も入れて、一体と一匹を追加で計上した一行が、クリンドの力を借り、行動を開始する。
　そのために、ペトラの提案した『対価』がオド・ラグナへくべられ――、

「――――」

　瞬間、文字通り、瞬く間に世界が切り替わり、『圧縮』が完了する。
　目を閉じて、開いたときには一変する景色。舌や肌で感じる空気の味わいと、嗅覚に触れる世界の匂いがガラリと変わって、ペトラは権能が使われたと実感する。

「――――」

　一瞬、ペトラは目をつむり、走り出した事実に思いを馳せた。
　しかし、その一秒の祈りで感傷を棚の上に置いて、意識を目の前のことに向ける。ここから先、ペトラたちには足踏み一個だって無駄にしている余裕はないのだ。
　そう、ペトラが強く気持ちを引き締め直して――、

「どわあああ！？　な、なんだなんだ！？　いきなり竜車が飛び出してきた！？」
「ら、ラインハルトか！？　そんなふざけた真似、あいつにしかできねえだろ！」
「オイラ、まだ夢見てんのか？　トト！　トトー！　柔らかい膝貸してくれー！」

「ええい、やかましいわ！　何をそう騒いで……ど、どっから出てきよった！？」

　そんなペトラの意気込みに水を差すぐらい、うるさくて落ち着きのない大歓迎を『圧縮』先から受けることになったのだった。

『あれ！？　ロム爺はともかく、トンチンカン！？　トンチンカンだ！　なんであいつらが一緒に！？　何故にホワイ！？』

　なお、その大歓迎に真っ先に反応した『スバル』も、そんな予想外の驚きに声を大きくしていたことを最後に付け加えておく。


　　　　　　　　　　　　　　　　△▼△▼△▼△


「ペトラちゃん！　メィリィ！　二人とも無事！？」

「――っ」
『エミリアたん……！』

　そう血相を変え、ペトラたちの下に駆け付けたエミリアを目の当たりにした途端、ペトラは自分の胸の内に甘やかな感情が爆発的に広がるのを味わった。
　ほわほわと温かく、痺れるほど甘ったるい感情で胸がいっぱいになり、頭の中には彼女の美貌と可憐さを称える美辞麗句が溢れ出す。その感激は容姿の賛美だけでなく、彼女の仕草や話し方、挙句に靴音にまで向けられる始末だ。

「すごい露骨……っ」

　その、わかりやすく強烈な感情の大波にさらわれ、ペトラの頭がくらくらする。
　ここまで、『死者の書』の影響で一番大きいと感じていたのは間違いなくイマジナリースバルの存在だったが、このエミリアショックはそれに匹敵するものがある。
　率直に言って、エミリアーゼの過剰摂取は命に関わるかもしれない――、

「なんて、馬鹿なこと言ってないの、わたし……！」

　いきなり意識の半分くらいを持っていかれかけ、ペトラは見失いそうになった自分の襟首を無理やり掴み、何とか現実に踏みとどまった。
　わかっていたことだが、あまりにも大胆にエミリアへの愛情が溢れすぎた。
　そのこと自体にもモヤモヤしたヤキモチを焼いてしまうのだが、それ以上に、ペトラだってエミリアと再会できて嬉しいのに、その自分がエミリアを大事に想う気持ちが追いやられてしまうのは、ペトラ的に異議ありなのだ。

　だからペトラは、自分たちを見つけ、ハッとするくらい綺麗な顔に涙を浮かべて駆け寄ってくるエミリアをＥ・Ｍ・Ｔと思う気持ちを堪え、両手を広げた。
　そして――、

「エミリア姉たま……！」

「ねえたま！？」

　盛大に舌が滑って、感動の再会間際にエミリアを驚かせてしまった。
　危うく「エミリアたん」と呼びそうになって、とっさに軌道修正を図ろうとしたのが図り切れなかった。まったく、ペトラらしからぬ失態である。
　ともあれ――、

「でも、よかった……。二人ともちゃんと会いにきてくれて」

「はい。エミリア姉様も、ご無事で何よりです」

　感極まったエミリアに抱き寄せられ、ペトラも彼女の体を抱き返し、そう答える。
　ペトラの反対では、同じように抱きしめられるメィリィが「息苦しいわあ……」と素直でない反応で、おっかなびっくりエミリアの背に手を回していた。

『うおー！　無事なエミリアたんを見れるとめちゃくちゃホッとする！　あれ？　ちょっと離れてる間に一段と可愛くなった？　伸び代すごくない？』

　その、ペトラとメィリィを抱擁するエミリアを色んな角度から眺めながら、空中に浮かんだ『スバル』が感激している。はしゃぎすぎ。でも、それも仕方ない。
　なにせ、『死者の書』のタイミング的に、『スバル』が最後に知っているエミリアは、『聖域』で大弱りしていたときの彼女になる。
　当時、ペトラはまだエミリアと今ほど仲良くなかったので、彼女の力になることができなかった。それをペトラすら悔しく思うのだから、間近で味わった『スバル』の歯痒さはその比ではなかっただろう。

『ああ！　大変だ、ペトラ！　見ろ！　エミリアたんが元気に歩いてる！』

「そうだね。長い足で歩いてたね。よかったね」

『よかった……！　本当によかった……！』

　なので、感動に打ち震える『スバル』に水を差すのも躊躇われた。その『スバル』の感激ぶりに適度な相槌を打ちながら、ペトラは密かな安堵を噛みしめる。
　その安堵の理由は一個――エミリアを見て、自分が怯えずに済んだことだった。

「『死者の書』で見た、最後の景色……」

　影に沈む『聖域』と、逃れられない執着に捕まり、『魔女』の用意した嫌がらせみたいな手段に縋り、自分の命に手をかけたナツキ・スバル。
　あの最後の瞬間、スバル＝ペトラは見たのだ。――恐ろしい『嫉妬の魔女』が、大好きな人と同じ顔をしていたことを。

「――――」

　その理由を深く考えようとすると、靄がかったものに手を伸ばすみたいに、ちゃんとした考えがどうしても形にならない。それでも、鮮烈に焼き付いた感情が剥がれない。
　だから、エミリアとの再会が怖かった。――違う。正確には、エミリアを前と同じように見られないかもしれないことが怖かった。

「でも、そうならなくてよかった。……前と違う意味で、ドキドキするけど」

「え？　ペトラちゃん、どうかした？」

「何でもないの。エミリア姉様と会えて、わたし、嬉しいです」

　内心にあった葛藤のことは伏せて、ペトラは本心からエミリアとの再会を喜ぶ。そのことにエミリアは目を丸くしながらも微笑み、素直じゃなさを継続中のメィリィの頭の上では、主人に代わって小紅蠍が上機嫌に鋏を鳴らしていた。
　と、そこへ――、

「――賑やかになったと思えば、きておったか、娘っ子」

　そこに、低くしわがれた声が割って入り、エミリアが「あ」と驚きの声を上げる。
　飛び込んできたエミリアが開けっ放しにしていた部屋の入口、そこに立つ大きな人影が扉をノックし、中を覗き込んでいた。
　その人影というのが――、

「フェルトちゃんのお祖父さん！」

　窮屈そうに入口を潜った老人、ロム爺の姿にエミリアが目をぱちくりとさせる。そのエミリアの声に、ロム爺は自分の禿頭を撫でながら苦笑して、

「お前さんの言い方だと、本気で血縁と思っていそうじゃな……周りのものにはロム爺と呼ばれておる。こうして、ちゃんと話すのは初めてになるの」

「えっと、そうね。王選が始まった日のお城ではお話しできなかったし、フェルトちゃんに徽章を盗まれちゃったときも、落ち着いて話すどころじゃなくて……」

「……そんなにちらちら気にしてくれなくても、事情はわかってるから平気よお」

　そのロム爺の挨拶に応じるエミリアが、腕の中のメィリィの様子を案じる姿に、当のメィリィが鬱陶しさと気遣いが半々くらいの態度で答える。
　今の二人のやり取りは、エミリアとロム爺との接点――以前、王選参加資格である徽章をフェルトがエミリアから盗んだときの出来事に、メィリィの姉であるエルザが関わっていたことを気にしたものだ。
　そう考えると、この三人も案外奇縁だ。『スバル』も入れれば、四人の奇縁。ラインハルトまで含めると、というとキリがなくなってくるか。

「娘っ子……などと呼ぶのも、今の立場じゃとなんじゃな。エミリアと呼んでも？」

「ええ、いいわ。改めてよろしくね、ロム爺」

『おお……この二人がちゃんと自己紹介なんて、なんか歴史的瞬間って気がするぜ』

「そんな大げさな」

　よろしくと、そう握手を交わしたエミリアとロム爺を見ながら、『スバル』が歴史的だなんて大きなことを言うのでおかしくなる。
　確かにちょっとした感慨深さはあれど、その言い方ではまるで十年以上も交流のなかった二人の再会でも目撃したみたいな言いようだ。
　と、そんな『スバル』の感激はいったん後回しにして――、

「フェルトちゃんのことは私も聞いてるわ。ロム爺たちも大変だったのよね？」

「む、そうじゃな。そのあたりのすり合わせはしておきたい。ペトラ」

「ですね。クリンド兄様が戻るまでもう少しかかると思うので、こっちは先に始めてていいと思います。……時間との勝負ですから」

　最後にそう付け加えたペトラに、エミリアとロム爺が同時に深く頷く。
　そう、時間との勝負。そのために、ペトラたちは反則技まで使ってきたのだから。


　――現在、ペトラたちが一堂に会したのは、王都ルグニカの王侯館だ。
　それぞれが散り散りに行動していたエミリア陣営の中、居場所がはっきりしていたのもあるが、誰かを中心に集まるなら、それはエミリア以外にありえなかった。
　そう考え、ペトラはクリンドの『圧縮』でロム爺たちとの合流後、王都に急ぎ飛んできたのだが――、

「この王都の荒れようは儂としても驚かされたわい」

「わたしも王都にくるのは久しぶりだけどお、前に見たときはこんなに街のあちこちボロボロじゃなかったし、あんなオブジェだってなかったはずよねえ」

　太い腕を組んだロム爺の言葉に、窓の外を眺めるメィリィが便乗する。
　経験者の二人と違い、ペトラが王都にやってきたのはこれが初めてだ。幸い、先ほど思い出した盗品蔵があったのは王都の貧民街だったので、その記憶を頼りにペトラも健在なときの王都と、今の王都を見比べることはできた。
　確かに、記憶の中の王都にはたくさんの派手な氷の塔がいくつも建っていたりしなかったし、立派な家々の並んだ貴族街はあんなに散らかってもいなかったはずだ。

「忌々しくて好かんとは思っておったが、ああも貴族街が更地になるとはな。漏れ聞こえた話によると、避難は済んでおったそうじゃが、とんでもない話じゃぞ」

「メィリィちゃんも言ってたけど、あの氷の塔ってエミリア姉様が？」

「あ、ええと、そうなんだけど、あれをしちゃったのには理由があって！　みんながすごーく危なくて、手加減してる余裕がちっともなくて……！」

　かろうじて無事だった王侯館から一望できる景色、王都の街並みに起こった大きな変化を指摘され、エミリアがどう説明したものかとあたふたする。
　そんな彼女のパタパタ具合を愛おしく思いながら、ペトラはロム爺と協力し、起こった出来事を一つずつ紐解いていき――、

「――じゃあ、やっぱりアルさんが」

「……そうなの。私がアルを止められなかったせいで、街もわやくちゃになっちゃって」

「エミリア姉様のせいなんかじゃありません。あの氷の塔だって、エミリア姉様がやらなかったら王都の人たちが大変で……だから、Ｅ・Ｍ・Ｇ（エミリアたん・マジ・ガーディアンエンジェル）ですっ」

「ん、ペトラちゃん、ありがと……え？　今、なんて言ったの？」

　自分を責めるエミリアに、ペトラは大きく首を横に振ってその責任を否定する。
　王都ルグニカを襲った大被害、そこにもアルとボルカニカが関わっていると聞かされ、むしろ責任を感じるのはペトラの方だ。そもそも、アルの悪巧みを出発点だったプレアデス監視塔で止められていれば、と。

「それを言い出したらキリがないわよお。みんなちょっとずつ、あの兜さんに出し抜かれちゃったんだからあ。悪いのは兜さんと、そのお仲間でしょお？」

「そうじゃな。足りんところを埋めるために反省するのはいいことじゃが、力不足を悔やんでも役には立たん。年寄りの経験則というやつじゃがな」

「――。ええ、二人の言う通りだと思う。悪さをしたのはアルで、その責任はアルが取らなくちゃダメ。くよくよしてる時間だって、私たちにはもったいないわよね！」

　メィリィとロム爺の言葉に、頬を引き締めたエミリアが気持ちを立て直す。そのエミリアの反応に小さく吐息し、ペトラもぐっとお腹に力を入れた。
　みんなの言う通り、反省のフリをした弱気は悪い癖。道は、いつも前にしかない。

『それはアルもそう考えてるだろうな。……でなきゃ、大罪司教を脱獄させるなんてライン越えの真似やらかさねぇだろ。本気で何考えてんだ、あいつ』

　ペトラの心情を拾い、アルが王都でしでかした暴挙に『スバル』が顔をしかめる。
　実際、ボルカニカをけしかけ、王都に大ダメージを与えたのもとんでもないテロ行為だが、それも本命の目的――『暴食』の脱獄幇助を知ると霞みかねない話だ。
　ペトラたちにとっても因縁深い『暴食』の大罪司教、それが逃がされるなんて。

「奴の起こした出来事をざっと列挙すると、気が遠くなるわい。王選候補の関係者を攻撃し、騎士の一人を拉致。王国の守護者であった『神龍』ボルカニカを寝返らせ、『嫉妬の魔女』を利用して『剣聖』の動きを封じる。さらに王選候補者の一人を人質に王都に乗り込んだ挙句、貴族街を半壊させ、囚われた大罪司教を脱獄させたとな」

『ヤバくない？　これ懲役何年？』

「百回くらい死刑になりそう……」

　改めて、アル――否、アル一味の罪状の多さと重さが尋常じゃない。
　まるで、この世の悪いこと全部やってやるぜくらいの勢いに見えるが、しかしペトラはそれがやけっぱちではなく、計画に基づいたものだとそう考えていた。
　そう、アルにはちゃんとした計画がある。そのために必要な手順を進めていて、それがたまたま世紀の大犯罪に近いものばかりなだけだ。

「大罪司教がいなきゃいけない計画なんて、最初から見直した方がいいんじゃなあい？」

「『嫉妬の魔女』もいるし、全然言い訳できないけどね……」

　そもそも、ペトラが代わりに言い訳しなければいけない謂れもない。
『死者の書』から受ける印象的に、スバルもアルのことを同郷の存在――憎からず思える相手と思っていたみたいだが、さすがに許せる範囲を軽々とオーバーだ。
　それに関しては、この場に集まった全員の――否、この場にいないものも含めて、関係者全員の共通見解と言えるだろう。

「今、クリンド兄様には他のみんなのところを回って、フレデリカ姉様たちを呼んできてもらってるところです。エミリア姉様、オットーさんは？」

「――あ！　えっと、その、オットーくんなんだけど」

「その反応でわかりました。また無茶してるんですね」

「うう……はい、そうなの。止められなくてごめんね」

　しなしなと萎れ、エミリアが自分が不甲斐ないとばかりに目を伏せる。が、エミリアに非はない。非があるとしたらオットーだし、今回はケースでは彼も悪くない。
　ただでさえオットーは、陣営の中でも日常的に無茶し続けているので、ペトラやフレデリカたちも常々休むよう言っているのだが、今回はその注意の適用外だ。
　実際、『言霊の加護』を操るオットーは、この状況では頼りになりすぎる。

「虫やら鳥やらを使った偵察に諜報、か。色々と悪さを思いつく加護じゃが……その分、背負い込む苦労も多くなりそうなものじゃな」

「あらあ、大正解。帽子のお兄さん、見るからに苦労性だものねえ」

「儂もそれなりに長生きしとるが、『言霊の加護』なんぞ聞いたこともない。これだけ使い道の多そうな加護がちっとも知られとらんということは、その加護を授かった加護者が誰も長生きしておらんということじゃろ」

　くすくすとメィリィは笑ったが、ロム爺の闇の深い推測にペトラは同感だ。
『言霊の加護』の使いすぎが体に悪そうなのは事実で、ペトラも帝国で、加護を多用したオットーが鼻血を出す場面を目にしている。
　あれも、戦争という手抜きなんてできない状況で必要に迫られてではあったが。

「スバルたちのこともだけど、特にガーフィールのことで思い詰めてて……絶対に何とかしてやるんだーって、すごーく意気込んでるみたい」

「たぶん、ガーフさんが起きてたら、オットー兄ィに頼まれったのに何っしてんだ俺様ぁよぉ……って落ち込んでたと思う。似た者同士なんだから」

「ペトラちゃんの物真似が似ててビックリしたわあ」

　驚くエミリアとメィリィの反応はともかく、そういう理由で無茶をしたがるオットーとガーフィールの姿は簡単に思い浮かぶ。
　まだ昏睡状態で、王都の治療院に預けてきたガーフィールだが、復活した彼が無闇に自分を責めたり、傷付こうとしないように十分注意しなくては。

「フルフーちゃんが、オットーさんをうまく宥めてくれるといいけど」

　そうこぼし、ペトラはこの場に同席していないオットーの身を案じる。
　どんな虫や動物と交渉しようと、集めた情報を聞き取りするにはオットー本人がいないといけない。そのため、オットーは単身、アル一味を追跡中――正しくは、長年の相棒でもある愛竜、フルフーとの二人行動だ。

『オットーか……肝心なところでヘマしないか心配だし、どこまで頼っていいもんか』

「それ聞いたらオットーさんの今までで一番怒った顔見られそう」

　何事も抱え込みがちなのがスバルだ。オットーに限らず、陣営の誰がそれを言われても怒りそうなものだが、一番おっかないのはオットーだろうとペトラは思う。
　とはいえ、オットーだけにかけていい負担ではないのは事実だ。クリンドがラムを連れてきてくれれば、彼女の『千里眼』の力を借り、負担の分担もできるはず。
　と、そこまで考えたところで、はたとペトラは思い出す。

「そうだ、エミリア姉様、聞いておきたいことがあったの」

「うん？　なに、ペトラちゃん」

「エミリア姉様は心当たりないかもしれないんだけど、実はここまでくる途中、わたしとメィリィちゃんがいきなり気持ち悪くなっちゃったことがあって……」

　ペトラが口にした疑問、それはフラムが姉妹のグラシスとの『念話の加護』で座標を特定したロム爺たちと合流し、次は王都に飛ぼうと話し合った直後ぐらいの出来事――いきなりペトラの全身が粟立ち、心を掻き回されるような衝撃に襲われたのだ。

　あまりの怖気に、ペトラはそれが『死者の書』の副作用か、あるいはラインハルトが負けてしまい、自分のところに『嫉妬の魔女』が押しかける前兆かとも思ったが、同じ感覚をメィリィも味わっていたことで、そのどちらでもないらしいと結論付けた。

「でも、この状況でしょ？　フラムちゃんとロムお爺さんたちは大丈夫だったけど、わたしとメィリィちゃん、それにクリンド兄様も感じたって。それなら、アルさんと無関係じゃないかもって思ったから……エミリア姉様？」

　メィリィやクリンドと話し合っても結論の出なかった異変だ。
　その危ないかもしれない情報の共有を、ペトラはエミリアの反応を見て中断した。エミリアがその美しい紫紺の瞳を見張り、頬を硬くしていたからだ。
　それは明らかに、心当たりのある反応だった。

「……そのすごーく気持ち悪いのって、たぶん、『暴食』の大罪司教の仕業だと思う」

『……『暴食』、だと？』

「うへえ、嫌な感じだわあ」

　目下、一番憎い大罪司教の存在に『スバル』が眉を顰め、メィリィが舌を出す。きゅっとペトラも自分の胸に手をやり、エミリアに話の先を目で促した。

「何をされたのか、私もはっきりとはわかってないの。でも、アルが『暴食』……ロイに何かさせて、そうしたら私もいきなり気持ち悪くなって、目を回してる間に……」

「アルさんと『暴食』の二人に逃げられちゃったんですね」

「ええ、そうなの」

　しょんぼりと肩を落とし、エミリアが力なく頷く。
　そのエミリアの返事に、ペトラがちらとロム爺を見ると、フェルト陣営の賢い担当の老人は大きな手で自分の頭を撫でながら、

「ペトラとメィリィたちだけで話しておったときは要領を得ん話じゃと思っとったが、エミリアまでそうなった上、『暴食』絡みとなるといい予感はせんの」

「共通点は……みんな、エミリア姉様の味方ってところ？」

「牙のお兄さんが起きてるか、帽子のお兄さんがここで大人しく待っててくれるか、スバルお兄さんが捕まってなかったらわかりやすかったのにねえ」

『現在軸の俺も含めて、タイミング悪い三馬鹿だな……』

　アル絡みなのはペトラの予想通りだが、まさかの『暴食』が関わってくるとなると、正体不明の攻撃に対する不安材料の深刻さは桁違いに大きい。――少しだけ、帝国にスピカを置いてきてしまったのが失敗に思えてくる。
　スピカもまた、紆余曲折あったとはいえ、『暴食』の大罪司教の一人で――、

「ダメダメ、こんな考え方。旦那様じゃないんだから」

　何ができて何ができないか、役に立つのか立たないのか。
　そんな観点で人の価値を見定め始めたら、一気にロズワール化が進んでしまう。洞察力はいくらでも磨いていいが、人間性が渇き始めたと思ったらご用心。

「その『暴食』の仕業については、ひとまず留意しておく以外になかろうな。それで、お前さんたちのところの内政官の話だと、奴らの目的地は……」

「――カララギの、モゴレード大噴口」

　結論の出ない話から軌道修正を図ったロム爺、その言葉をエミリアが引き取る。
　それがアル一味の最終目的地であり、それが判明した経緯は――、

「奴らに連れられるフェルトが残し、お前さんらの身内が伝えた、か。儂はフェルトのことを百信じられるが、お前さんたちは」

「オットーくんのこと？　百どころか、百万くらい信じてるわ」

「エミリア姉様、今のは数じゃなくて、百分率ですよ。でも、カッコいいです」

　百分率の概念に囚われないエミリアの答えにペトラは胸を熱くし、ロム爺とメィリィは呆れたように苦笑する。
　でも、ロム爺が聞きたかったことにはちゃんと答えているのがエミリアらしい。

『……可愛いだけじゃなくて、すげぇ強くなったんだな、エミリアたん』

　そんなエミリアを、眩しいものを見る目で『スバル』は見つめていた。
『聖域』での問題解決の途中で引き上げられた状態の『スバル』には、このエミリアのすごさがどう培われたものなのかがちゃんと伝わらなくてもどかしい。
　言ってあげたくなる。――今のエミリアは、スバルと二人三脚で鍛えられたのだと。

「ううん、ベアトリスちゃんがいるから三人四脚……その理屈でいいなら、わたしも入れてほしいし、ガーフさんも入れてあげないと拗ねそう。メィリィちゃんはどうする？」

「どうするも何も何の話なのお？　急にスバルお兄さんみたいなこと言い出されると怖いわあ」

『確かに俺が言いそうな発言だったけど、メィリィの理解度高くない？』

　いくらかの感慨深さを残したまま、『スバル』がペトラとメィリィの会話に苦笑。
　いずれにせよ、先のエミリアの答えにロム爺も納得してくれたようで、アルたちの最終目的地がモゴレード大噴口とわかったことは共有された。
　正直、その場所に何があるかはわからないが――、

「場所さえわかってるなら、クリンドさんの力を借りれば先回りできるはずよね」

「――。です。ロムお爺さん、トンチンカンさんたちは」

「ひとまず、重傷者以外は指示通りに近くの町に入ったはずじゃ。あのクリンドという若僧の力……多用するわけにもいかんのじゃろう？　枠は合わせるわい」

　大きな肩をすくめるロム爺は、細かな説明のないクリンドの権能にもそうして理解を示してくれている。
　ペトラの提案した『対価』によって、クリンドの『圧縮』の権能は使用の制限を解除されているが、それも移動する回数や人数次第で賄い切れなくなる。まずは最少の人数で場を整え、最大人数の投入は見極めが完了してから。

　その用意も、無茶な行動真っ只中なオットーのおかげで光明が見えた。
　あとは、最終目的地に辿り着くまでに、アル一味がどのような布陣でいくつもりかの情報が多ければ多いほど助かる。
　そして――、

「――そのための手段は、すでにこちらの手に。好機」

　待ってましたのタイミングで聞こえた声に、ペトラたちが一斉に振り返る。その視線を一身に浴びて一礼するのは、まさにちょうど話したかったクリンドだった。
　まるでタイミングを窺っていたみたいな間の良さに、「クリンドさん！」とパッと顔を明るくしたエミリアが声を上げ、

「ペトラちゃんたちを送ってくれてありがとう。おかげでこうしてちゃんと会えたわ」

「礼には及びません。ミルーラに戻ったのは私自身の判断で、こうしてご期待に沿えましたのはペトラに背中を叩かれた結果。激励。それよりも、戻るのが遅くなりましたことを謝罪いたします。陳謝」

「遅くなったってほどじゃないと思うけど、何かあったの？　クリンド兄様」

　ゆるゆると首を横に振り、そう謝罪したクリンドにペトラが首を傾げる。
　確かに、『圧縮』の性能を考えれば、クリンドの王侯館への合流はいくらか時間がかかったと言えるかもしれない。だが、迎えにいった先で相手に事情を説明する必要もあったはずだし、遅くなったと謝られるほどとは思えない。
　仕事ができる人間だからこその、完璧主義の表れだろうか。と、そう考えたペトラの方を見て、クリンドは「いえ。否定」と口を開き、

「遅れた理由につきましては、言葉で説明するよりも、直接体感していただくのが一番早く、確実な理解の助けになるかと。実感」

『直接』
「体感？」

　遅刻の釈明にしては不自然な言葉選びに、『スバル』とペトラが首を傾げる。
　同じ疑問はエミリアとメィリィも抱いたようで、ある意味、一番客観的なポジションにいられるロム爺は腕を組み、何があるのかと興味深げに見守る姿勢だ。
　そして、そんな一同が見守る中、クリンドが部屋の入口の横にずれると、

「ハッ。待たせたわね」

　威風堂々、肩で風を切って部屋に足を踏み入れたのは、その傍若無人な振る舞いもよくお似合いの桃髪のメイド――ご存知、ラムだった。
　クリンドに迎えにいってもらって合流した彼女は、しばらくぶりに見るメイド服に袖を通していて、同じメイドの立場のペトラも、ずいぶん制服とご無沙汰だと懐かしくなる。
　しかし――、

「ラム、きてくれ、て……」

　そのメイド服姿のラムを迎え、笑顔で駆け寄ろうとしたエミリアの言葉が途切れる。足が止まり、ラムの手を握ろうとしていた手が、自分の額に当てられた。

「え、と」

　当惑したような声を漏らすエミリア。
　突然のことに、ペトラは彼女の身を案じるべきだったが、それはできない。何故ならペトラも、メィリィもエミリアと同じく、不可解な感覚に苛まれていたのだ。

「これ、って――」

　ラムを見た途端、湧き上がってきた不可解な、言葉にならない巨大な動揺。
　その持て余す謎の感覚を、ペトラは先ほど話題にした『暴食』由来の気持ち悪さと近いものがあると感じる。ただし、あのときの気持ち悪さには強い悪意を感じたが、このときの感覚にはそれを感じない。
　これはそういうものではなくて、もっと別の、強い強い、引力――メイド服姿のラムを目にしたことで、強烈に何かが引き出される感覚だ。
　そしてその引力の答えは、ラムの後ろからすぐに現れた。
　それは――、

「――合流が遅くなり、申し訳ございません、エミリア様」

　そう言って、ラムの隣に並んだのは、彼女と同じメイド服に身を包み、流麗な動きでしっとりとしたカーテシーをしてみせる、青い髪のメイド。
　もちろん、知っている顔だ。しかし、ペトラが知っている範囲の彼女は、そのメイド服を着こなし、完璧な作法を行える状態になかったはず。――違う、それも違う。

　改めて、改めて、改めて、認識が改められる。
　違う。そう、違った。彼女にメイドとしての知識や作法が備わっていないだなんてとんでもない。だってこの世界で、彼女は誰より一番最初にちゃんとしたメイドとしての印象をナツキ・スバルに、まだ村娘だったペトラに、教えてくれた。
　そのことを、ペトラ・レイテは引力によって思い出す。

　すなわち、そこに立っていたのは――、

「あの人……スバルくんを取り戻すため、レムの微力を尽くさせていただきます」

　そう、ロズワール邸の元祖万能お役立ちメイド、慇懃無礼な毒舌担当、レムはその薄青の瞳で真っ直ぐ前を見て宣言したのだった。

TRANSLATED TEXT:
Chapter Nine: "Light of the Nameless Star"  
Chapter 34: "Gravity"

Clind's "Transfer"—though he personally described it as "Compression"—was something Petra hadn't experienced in about a month, and for Meili, it had been a few days.

"It might be surprising the first time, but there's no need to be scared," Petra advised Flam, who had never experienced it, from the perspective of someone who had. It was a consideration to prevent panic by explaining what was about to happen, but Flam shook her head and replied, "No need to worry, most surprises can't surpass the young master."

"Is he treated like a surprising and shocking person even by his own family? Just how much is that?"

Subaru commented in amazement at such a resilient answer. However, from the memories shared through the Book of the Dead, Petra also knew about Reinhard blowing away a building with a single swing of his sword and scattering Meili's sister, so she was quite understanding of Flam's attitude, accustomed to the extraordinary.

"Even if Flam-chan is okay, I hope the sleeping teacher doesn't get dizzy. When the butler first transferred us, Little Red Scorpion was in a big panic."

"Speaking of which, is there something like transfer sickness? In Vollachia, it seemed like some people were okay with Spica-chan's 'Transfer' while others weren't."

Meili shrugged her shoulders, and her hair moved slightly, revealing Little Red Scorpion, who mimicked its owner's gesture by shrugging its pincers. This reminded them of Spica's "Transfer" left behind in the empire—it seemed to depend on one's constitution, with no regard for strength or weakness; some people just couldn't handle it. Petra was on the okay side, but Garfiel, who wasn't, would curl up and sulk.

To Petra's question, Clind raised a finger and said, "Indeed. Consideration. Although the number of trials and participants isn't large, no one has fallen ill so far. Reassurance. The authority of 'Melancholy' is not strictly 'Transfer'; it compresses the time and distance that should have been required. Omission."

"No matter how many times I hear it, I don't get it."

"So, is it okay to think of it as King Crimson? No, it's doubtful if it can skip the results in between, so it's different from King Crimson..."

"No need to worry about getting dizzy, and it's a power that creates the time we need most right now. If we understand that, it's enough for now."

Meili tilted her head, and Petra concluded as Subaru simplified it in his own way. While she could somewhat understand Subaru's explanation, she couldn't afford to spend time and thought on it now. If time allowed, she wanted to properly confirm all the memories and knowledge that had been poured into her and become someone who understood everything about Subaru—but...

"Clind-niisama, may I ask you?"

Instead of fulfilling that desire, Petra urged Clind, feeling that even the time spent holding such a wish was a waste. Clind nodded, his monocle lens gleaming, "Yes. At the right time." His reassuring attitude was comforting, considering the phenomenon he was about to initiate.

As Petra marveled at this, Meili tugged on her sleeve, "Hey, Petra-chan, about the matter of compensation earlier."

"—. It's okay, Clind-niisama has given his assurance."

"That's not it. ...I don't know why, but if Petra-chan has to feel at a loss, I don't want that."

"Loss..."

Meili seemed overwhelmed by her emotions, and Petra blinked at her words. The straightforward concern from her friend and the evaluation of the compensation received from Clind—at that moment, the emotions swirling in Petra's chest reached a complexity and richness of colors.

With that, Petra smiled at Meili,

"Thank you, Meili-chan. But really, I'm fine."

"...If you're lying, that's just mean."

The threat squeezed out after some thought, its awkwardness made Petra nod with a smile. She gently held the sleeve that had been released and then searched for Subaru's figure. Although she wouldn't leave his phantom behind, it was a matter of feelings.

When she found his translucent back, Subaru was gazing at the sand sea from afar.

"If I were a bit more reliable, I wouldn't cause him so much trouble."

In the eastern sky—where the atmosphere screamed, the color of the sky reached a ghastly extreme, and the sound of the earth being torn echoed—the battle between the Sword Saint and the Witch of Envy continued. It was a clash of mighty forces that could determine the world's fate. Seeing Subaru's profile, regretting his lack of power, Petra held her breath in sorrow.

Subaru, concerned for his friend's well-being, did not touch upon the earlier exchange between Petra and Clind, respecting Petra's wishes. In theory, he, being a presence in Petra's mind, should not be able to keep secrets from him, and if he wanted, he could lay bare the information Petra tried to block out.

However, the imaginary Subaru did not do so. Whether it was due to Subaru's decency and compassion or Petra's will to make him comply, Petra couldn't discern as her self-awareness, affection, and memories intertwined.

But regardless of which it was, that's what Petra thought. Whether it was compassion or the result Petra desired, Subaru's existence was a reflection of how the real Natsuki Subaru appeared through Petra Leyte's eyes. Therefore—

"Clind-nii-sama, please."

"—Understood. Commendation."

While holding affection for Subaru, Petra signaled to Clind. Petra, Meili, and Flam, along with Patrasche pulling the dragon carriage, the unconscious Garfiel and Ezzo, totaling six people—a group that included Subaru and Little Red Scorpion, adding one more person and one more creature, began to act with Clind's help.

For that purpose, the 'compensation' Petra proposed was offered to Od Lagna—

"——"

In an instant, literally in the blink of an eye, the world switched, and 'compression' was completed. When she closed her eyes and opened them again, the scenery had completely changed. The taste of the air felt on her tongue and skin, and the scent of the world that touched her sense of smell changed drastically, making Petra realize that the authority had been used.

"——"

For a moment, Petra closed her eyes and reflected on the fact that they had set off. However, with a prayer of one second, she set aside her sentimentality and focused her consciousness on the task at hand. From here on, Petra and her group couldn't afford to waste even a single step.

With that, Petra steeled her resolve—

"Whoa!? Wh-what's going on!? Did the dragon carriage just suddenly jump out!?"
"Is it Reinhard!? Only he could pull off such a crazy stunt!"
"Am I still dreaming? Toto! Toto! Lend me your soft lap!"

"Hey, shut up! Why are you making such a fuss... Wh-where did you come from!?"

The enthusiastic spirit of Petra was quickly dampened by the loud and restless welcome she received from the 'compressed' destination.

"What!? Old Man Rom is one thing, but Tonchinkan!? It's Tonchinkan! Why are they together!? Why indeed!?"

Additionally, it's worth noting that 'Subaru,' who was the first to react to this grand welcome, also raised his voice in surprise at such an unexpected turn of events.

△▼△▼△▼△

"Petra-chan! Meili! Are you both okay!?"

"――"

'Emilia-tan...!'

The moment Petra saw Emilia, who had rushed over to them with a worried expression, a sweet emotion exploded within her chest. Her heart was filled with a warm, almost intoxicatingly sweet feeling, and her mind overflowed with words of praise for Emilia's beauty and grace. This admiration extended not only to her appearance but also to her gestures, her way of speaking, and even the sound of her footsteps.

"That's so obvious..."

Overwhelmed by this intense wave of emotion, Petra felt dizzy. Up until now, the most significant influence from the 'Book of the Dead' had undoubtedly been the presence of the imaginary Subaru, but this Emilia shock was comparable. Frankly speaking, an overdose of Emilia might be life-threatening—

"What am I saying...!"

Suddenly feeling as if half of her consciousness was being swept away, Petra forcibly grabbed hold of her own collar to keep herself grounded in reality. She knew it, but her affection for Emilia had overflowed too boldly. This realization also sparked a twinge of jealousy, but more than that, Petra was happy to see Emilia again, and she didn't want her feelings for Emilia to be overshadowed.

So Petra held back her feelings of thinking of Emilia as E.M.T. as she spread her arms wide.

And then—

"Emilia nee-tama...!"

"Nee-tama!?"

Her tongue slipped grandly, surprising Emilia just before their emotional reunion. She almost called her "Emilia-tan" and tried to correct herself on the fly, but it didn't quite work out. It was a rare slip-up for Petra. Nevertheless—

"But I'm glad... that you both came to see me."

"Yes. I'm relieved to see you safe, Emilia nee-sama."

Emilia, overwhelmed with emotion, pulled Petra into an embrace, and Petra hugged her back, responding in kind. On the other side, Meili, also being embraced, responded with a straightforward, "It's suffocating..." as she cautiously wrapped her arms around Emilia's back.

"Whoa! Seeing Emilia-tan safe is such a relief! Huh? Did she get even cuter while we were apart? Isn't her potential amazing?"

Watching Emilia embrace Petra and Meili from various angles, the floating 'Subaru' was filled with emotion. He was overly excited, but it was understandable. After all, the last Emilia 'Subaru' knew, due to the timing of the 'Book of the Dead,' was when she was struggling in the 'Sanctuary.' At that time, Petra wasn't as close to Emilia as she is now, so she couldn't support her. If even Petra felt regret about that, the frustration 'Subaru' experienced up close must have been incomparable.

"Oh! Petra, look! Emilia-tan is walking energetically!"

"Yes, she was walking with her long legs. That's great."

"Great...! Really great...!"

Therefore, it was hard to interrupt 'Subaru' who was trembling with emotion. While giving appropriate responses to Subaru's excitement, Petra savored a quiet relief. The reason for her relief was simple—seeing Emilia and not being afraid.

"The last scene I saw in the 'Book of the Dead'..."

The 'Sanctuary' sinking into shadows, caught by inescapable obsession, and Natsuki Subaru clinging to a method prepared by the 'Witch' that seemed like harassment, taking his own life. In that final moment, Subaru—Petra saw it. —The terrifying 'Witch of Envy' had the same face as the person she loved.

"――――"

When trying to deeply consider the reason, it was like reaching out to something shrouded in mist, and a proper thought couldn't take shape. Still, the vividly etched emotions wouldn't fade. That's why she was scared of reuniting with Emilia. —No, to be precise, she was scared that she might not be able to see Emilia the same way as before.

"But I'm glad it didn't turn out that way. ...Though I feel nervous in a different way than before."

"Huh? Petra-chan, is something wrong?"

"It's nothing. I'm just happy to see Emilia-sama."

Keeping the inner conflict to herself, Petra genuinely rejoiced at reuniting with Emilia. Emilia widened her eyes in surprise but smiled, while on Meili's head, who continued to be unsociable, the Little Red Scorpion clattered its pincers in high spirits. And then—

"—I thought it had gotten lively, so you were here, young lady."

A low, raspy voice interrupted, and Emilia let out a surprised "Ah." At the entrance of the room, left open by Emilia who had rushed in, a large figure knocked on the door and peeked inside. That figure was—

"Felt-chan's grandfather!"

Emilia blinked in surprise at the sight of the old man, Old Man Rom, who squeezed through the entrance. In response to Emilia's voice, Old Man Rom rubbed his bald head and chuckled wryly,

"The way you say it, it sounds like you really think we're blood-related... People around here call me Old Man Rom. This is the first time we've had a proper conversation."

"Well, yes. We couldn't talk at the castle on the day the Royal Selection started, and when Felt-chan stole the Insignia, it wasn't exactly a time to have a calm conversation..."

"...You don't have to worry about it so much, I understand the situation."

Responding to Old Man Rom's greeting, Emilia, concerned about Meili in her arms, received a half-annoyed, half-considerate response from Meili. The current exchange between the two was connected to Emilia and Old Man Rom's past—when Felt stole the Insignia, which was a qualification for participating in the Royal Selection, and Meili's sister Elsa was involved in the incident. Thinking about it this way, these three are quite an unusual connection. Including 'Subaru', it's a strange connection of four. If you add Reinhard, it becomes endless.

"Calling you 'young lady' doesn't suit the current situation, does it? Can I call you Emilia?"

"Yes, that's fine. Nice to meet you again, Old Man Rom."

"Oh... It feels like a historic moment for these two to properly introduce themselves."

"That's an exaggeration."

As Emilia and Old Man Rom exchanged a handshake, Subaru made a grand statement about it being historical, which was amusing. Indeed, there was a certain depth of feeling, but the way he put it made it sound as if he had witnessed the reunion of two people who hadn't interacted for over a decade. However, setting aside Subaru's excitement for the moment—

"I've heard about Felt-chan too. It must have been tough for you and Old Man Rom, right?"

"Yes, that's right. We need to align on that. Petra."

"Indeed. I think it will take a bit more time for Clind to return, so we should start ahead. It's a race against time, after all."

As Petra added this last point, Emilia and Old Man Rom nodded deeply in agreement. Yes, it was a race against time. That's why Petra and the others had resorted to using underhanded tactics.

—Currently, Petra and the others had gathered at the royal mansion in the Royal Capital Lugnica. Among the Emilia camp, who were scattered and acting separately, it was clear where they should gather, and it couldn't have been anyone other than Emilia. With that in mind, Petra used Clind's 'Compression' to quickly fly to the capital after meeting up with Old Man Rom—

"The state of this capital surprised even me."

"It's been a while since I last came to the capital, but it wasn't this rundown all over the place, and there weren't any objects like that before, right?"

Meili chimed in, looking out the window at Old Man Rom's words with his arms crossed. Unlike the two experienced ones, this was Petra's first time in the capital. Fortunately, she had recalled earlier that the stolen goods warehouse was in the capital's slums, so she could compare her memory of the capital when it was intact with the current state. Indeed, in her memory, the capital didn't have many flashy ice towers, and the noble district with its fine houses wasn't so cluttered.

"I always thought it was unpleasant, but for the noble district to become a wasteland like that... From what I overheard, the evacuation was completed, but it's an unbelievable story."

"Meili-chan mentioned it too, but those ice towers, are they Emilia-neesama's doing?"

"Ah, um, yes, but there was a reason for that! Everyone was in great danger, and there was no room for holding back at all...!"

As the significant changes in the capital's landscape were pointed out from the barely intact royal mansion, Emilia was flustered, wondering how to explain. Watching her flustered state with affection, Petra, along with Old Man Rom, began to unravel the events one by one—

"So, it was Al after all."

"…Yes. Because I couldn't stop Al, the city ended up in chaos."

"It's not Emilia-neesama's fault. If you hadn't created those ice towers, the people of the capital would have been in trouble... That's why, E.M.G (Emilia-tan, Major Guardian Angel)!"

"Uh, Petra-chan, thank you... huh? What did you just say?"

As Emilia blamed herself, Petra shook her head vigorously, denying that responsibility. Hearing that Al and Volcanica were also involved in the great damage that struck the Royal Capital Lugnica, Petra felt the responsibility even more. If only Al's schemes had been stopped at the starting point, the Pleiades Watchtower.

"If we start talking about that, there's no end to it. Everyone got outsmarted by that helmet guy a little bit. The ones at fault are the helmet guy and his companions, right?"

"Indeed. It's good to reflect to fill in the gaps, but lamenting over lack of strength is of no use. It's an old man's wisdom."

"――. Yes, I think the two of you are right. The one who did wrong is Al, and Al must take responsibility. Even the time spent brooding is a waste for us, isn't it?"

With the words of Meili and Old Man Rom, Emilia tightened her cheeks and regained her composure. At Emilia's response, Petra let out a small sigh and also gathered strength in her stomach. As everyone said, pretending to reflect while being weak-hearted is a bad habit. The path always lies ahead.

'Al probably thinks the same. Otherwise, he wouldn't have done something as over the line as breaking a Sin Archbishop out of prison. What is he seriously thinking?'

Picking up on Petra's feelings, Subaru frowned at the outrageous act Al committed in the Royal Capital. In reality, inciting Volcanica and causing massive damage to the Royal Capital was an outrageous act of terrorism, but knowing that the real objective was aiding the jailbreak of 'Gluttony' makes it seem insignificant. For Petra and the others, the Sin Archbishop of 'Gluttony' is deeply connected to them, and the fact that they were allowed to escape is unthinkable.

"When you list the events caused by that guy, it makes your head spin. Attacking associates of the royal selection candidates, kidnapping one of the knights. Turning 'Divine Dragon' Volcanica, who was a guardian of the kingdom, against them, using the 'Witch of Envy' to immobilize the 'Sword Saint'. Furthermore, after taking one of the royal selection candidates hostage and invading the Royal Capital, he half-destroyed the noble district and broke the imprisoned Sin Archbishop out."

'Isn't this bad? How many years of imprisonment is this?'

"Seems like he could get the death penalty a hundred times..."

Once again, the sheer number and gravity of the crimes committed by Al—no, Al's group—are extraordinary. It seems like they're trying to do every bad thing in the world, but Petra believed it wasn't out of desperation, but rather based on a plan. Yes, Al has a proper plan. He's following the necessary steps for it, and it just so happens that they're all akin to major crimes of the century.

"Shouldn't a plan that requires a Sin Archbishop be reconsidered from the start?"

"Even with the 'Witch of Envy', there's no way to justify it..."

In the first place, there's no reason for Petra to make excuses on their behalf. From the impression received from the 'Book of the Dead', Subaru also seemed to think of Al as a fellow countryman—a not entirely disliked counterpart—but this time, he had clearly crossed the line of what could be forgiven. Regarding this, it can be said that it's the common understanding of everyone gathered here—no, including those not present, all involved parties.

"Right now, Clind is going around to everyone else and bringing Frederica and the others here. Emilia, what about Otto?"

"――Ah! Um, about Otto-kun..."

"That reaction says it all. He's doing something reckless again, isn't he?"

"Ugh... yes, he is. I'm sorry I couldn't stop him."

Emilia wilted and lowered her eyes, feeling inadequate. But Emilia is not at fault. If there's any fault, it's with Otto, and in this case, he's not to blame either. Even under normal circumstances, Otto is constantly overexerting himself within the faction, and Petra and Frederica often tell him to rest, but this time it's outside the scope of that advice. In fact, Otto, who manipulates the 'Divine Protection of Speech', is incredibly reliable in this situation.

"Using insects and birds for reconnaissance and espionage, huh? It's a blessing that brings many mischievous ideas... but it seems like it would also bring a lot of burdens."

"Oh my, exactly. The man in the hat looks like he's had his share of troubles."

"I've lived quite a long life myself, but I've never heard of a 'Blessing of Words.' The fact that such a versatile blessing is unknown suggests that those who received it didn't live long."

Meili chuckled, but Petra agreed with Old Man Rom's dark speculation. It's true that overusing the 'Blessing of Words' seems harmful to the body, and Petra had witnessed Otto in the empire, getting a nosebleed from overusing his blessing. That was during a situation where cutting corners wasn't an option due to the war.

"It's not just about Subaru and the others, but especially about Garfiel... he's really determined to do something about it."

"If Garf was awake, he'd probably be upset, saying, 'What the hell am I doing, being asked by Otto?' They're two of a kind."

"Petra-chan, your impression is spot on, I'm surprised."

Emilia and Meili's reactions aside, it's easy to imagine Otto and Garfiel wanting to take reckless actions for such reasons. Garfiel, still in a coma and left in the care of the Royal Capital's clinic, must be watched carefully to ensure he doesn't blame himself or get hurt when he recovers.

"I hope Furufu can manage to calm Otto down."

Petra expressed her concern for Otto, who wasn't present. No matter what insects or animals he negotiates with, Otto himself must be there to gather the information. Thus, Otto was pursuing Al's group alone—technically, with his long-time partner and beloved dragon, Furufu.

"Otto, huh... I'm worried he might mess up at a critical moment, and I'm not sure how much we can rely on him."

"Hearing that would probably make Otto show his angriest face ever."

Subaru tends to shoulder everything himself. Anyone in their camp would likely be upset to hear that, but Petra thought Otto would be the scariest. However, it's true that it's not a burden Otto should bear alone. If Clind could bring Ram, they could share the burden using her 'Clairvoyance' ability. As Petra thought this far, she suddenly remembered something.

"Oh, Emilia-sama, there's something I wanted to ask you."

"Hmm? What is it, Petra-chan?"

"You might not have any idea, but on our way here, Meili-chan and I suddenly felt sick..."

Petra's question referred to an incident that occurred just after Flam used the 'Telepathy Blessing' with her sister Grasis to pinpoint Old Man Rom's group's location, and they were discussing their next move to the Royal Capital. Suddenly, Petra's entire body was covered in goosebumps, and she was hit by a shock that seemed to stir her heart.

The fear was so intense that Petra wondered if it was a side effect of the 'Book of the Dead,' or a sign that the 'Witch of Envy' was coming after Reinhard's defeat. However, since Meili experienced the same sensation, they concluded it was neither.

"But given the situation, right? Flam and Old Man Rom were fine, but Meili-chan, Clind, and I felt it. So, I thought it might not be unrelated to Al... Emilia-sama?"

The anomaly that couldn't be concluded even after discussions with Meili and Clind.

Petra halted sharing the potentially dangerous information upon observing Emilia's reaction. Emilia's beautiful violet eyes widened, and her cheeks stiffened.

It was clearly a reaction that indicated she had an idea.

"...That really creepy feeling, I think it's probably the work of the Sin Archbishop of 'Gluttony'."

"'...Gluttony', you say?"

"Ugh, that's such a nasty feeling."

Subaru furrowed his brows at the mention of the most hated Sin Archbishop, and Meili stuck out her tongue. Petra also placed her hand on her chest and urged Emilia to continue with her eyes.

"I don't know exactly what was done to me. But Al did something with 'Gluttony'... Roy, and then I suddenly felt sick, and while I was dizzy..."

"Al-san and the two of 'Gluttony' managed to escape, didn't they?"

"Yes, that's right."

Emilia nodded weakly, her shoulders slumped dejectedly.

At Emilia's response, Petra glanced at Old Man Rom, and the wise elder of the Felt camp stroked his head with his large hand.

"When Petra and Meili were talking, it seemed like a vague story, but with Emilia involved and 'Gluttony' in the mix, it doesn't bode well."

"The common point is... everyone is on Emilia's side?"

"If the fanged brother were awake, or if the hatted brother were waiting quietly here, or if Subaru brother hadn't been captured, it would have been clearer."

"Including the current me, we're a trio of bad timing..."

As Petra expected, it involved Al, but with the unexpected involvement of 'Gluttony', the severity of the unknown attack's threat was significantly greater. —It seemed like a mistake to have left Spica in the empire, even if just a little.

Spica, too, despite the twists and turns, was one of the Sin Archbishops of 'Gluttony'—,

"No, no, not this kind of thinking. I'm not the master."

What can be done and what can't, whether it's useful or not.

If you start judging people's value from such a perspective, you'll quickly become like Roswaal. It's fine to hone your insight as much as you want, but be careful if you feel your humanity starting to dry up.

"As for the work of 'Gluttony', we should keep it in mind for now. So, according to your internal affairs officer, their destination is..."

"—The Grand Mogolade Geyser in Kararagi."

Old Man Rom, attempting to steer the conversation away from the inconclusive topic, was followed by Emilia's words.

That was the final destination of Al's group, and the process by which this was discovered was—,

"Felt, who was taken by them, left a message, and your kin conveyed it. I trust Felt completely, but what about you?"

"About Otto-kun? I trust him not just a hundred, but about a million."

"Emilia-neesama, that wasn't about numbers, but percentages. But it's cool."

Petra's chest swelled with emotion at Emilia's answer, which wasn't bound by the concept of percentages, and Old Man Rom and Meili smiled wryly in exasperation.

But Emilia, true to herself, answered what Old Man Rom wanted to know.

"...Not just cute, but she's become incredibly strong, hasn't she, Emilia-tan?"

Subaru watched Emilia with eyes that seemed to see something dazzling.

To the 'Subaru' who was pulled away in the middle of solving the 'Sanctuary' problem, it was frustrating that he couldn't fully grasp how this amazing Emilia had been cultivated.

He wanted to tell her. —That the current Emilia was trained through a three-legged race with Subaru.

"Well, with Beatrice-chan here, it's like a three-legged race... If that's the logic, I'd like to be included too, and Garf-san might sulk if he's not. What about you, Meili-chan?"

"What do you mean, what about me? It's scary when you suddenly start saying things like Subaru-oniisan."

'That was indeed something I might say, but isn't Meili's understanding quite high?'

With a lingering sense of sentimentality, 'Subaru' chuckled wryly at Petra and Meili's conversation. In any case, Old Man Rom seemed satisfied with Emilia's earlier answer, and it was shared that Al and the others' final destination was the Grand Mogolade Geyser. Honestly, they didn't know what was there, but—

"If we know the location, we should be able to get ahead with Clind-san's help, right?"

"—. Yes. Old Man Rom, Tonchinkan and the others are—"

"For now, everyone except the seriously injured should have entered the nearby town as instructed. We can't overuse the power of that young man Clind, can we? We'll match the slots."

Old Man Rom shrugged his large shoulders, showing understanding even without detailed explanations of Clind's authority. Thanks to the 'consideration' proposed by Petra, the restriction on Clind's 'Compression' ability was lifted, but it couldn't cover everything depending on the number of moves and people. First, they would set the stage with the minimum number of people and decide on the maximum number of participants after assessing the situation.

Thanks to Otto, who was in the midst of reckless actions, a ray of hope appeared for those preparations. The more information they had on how Al's group planned to deploy themselves before reaching the final destination, the better. And—

"For that purpose, the means are already in our hands. An opportunity."

At the sound of the voice that came at just the right timing, Petra and the others turned around simultaneously. The one who bowed under their collective gaze was none other than Clind, whom they had just been talking about. With impeccable timing, as if he had been waiting for the right moment, Emilia brightened up and exclaimed, "Clind-san!"

"Thank you for bringing Petra-chan and the others. Thanks to you, we were able to meet properly like this."

"No need for thanks. Returning to Mirula was my own decision, and being able to meet your expectations like this was the result of Petra's encouragement. Encouragement. More importantly, I apologize for being late. Apologies."

"I don't think it was that late, but did something happen, Clind-niisama?"

Petra tilted her head as Clind, shaking his head slowly, apologized. Considering the performance of 'Compression', it might be said that Clind took some time to join them at the royal mansion. However, he must have needed to explain the situation to the people he went to pick up, so it didn't seem like something to apologize for being late. Perhaps it's a reflection of the perfectionism of someone capable. As Petra thought this, Clind looked at her and said, "No. Denial."

"As for the reason for the delay, I believe experiencing it directly rather than explaining it in words would be the quickest and most certain way to aid understanding. Experience."

'Directly'
"Experience?"

Subaru and Petra tilted their heads at the unnatural choice of words for an excuse for being late. Emilia and Meili seemed to share the same doubt, and Old Man Rom, who was in a sense in the most objective position, folded his arms and watched with interest to see what would happen. Then, as everyone watched, Clind moved aside from the entrance of the room and said,

"Ha. I've kept you waiting."

With a dignified air, cutting through the room with her shoulders, the peach-haired maid whose audacious behavior suited her well entered—it was none other than Ram. Having been picked up by Clind and joined the group, she donned her maid uniform for the first time in a while. Petra, also a maid, felt nostalgic, realizing it had been quite some time since she last wore her uniform.

However—

"Ram, you came, and..."

Emilia's words trailed off as she tried to greet Ram in her maid outfit with a smile and approach her. Her steps halted, and the hand she was about to extend to Ram was placed on her own forehead.

"Uh, um..."

Emilia let out a voice that seemed bewildered. Petra should have been concerned about her sudden behavior, but she couldn't. This was because Petra, like Meili and Emilia, was also plagued by an inexplicable sensation.

"This, is—"

The moment she saw Ram, an inexplicable, indescribable turmoil surged within her. Petra felt that this mysterious sensation was akin to the discomfort she had recently discussed, originating from 'Gluttony.' However, unlike the strong malice she felt at that time, this sensation lacked such negativity. It wasn't like that; it was something else, a strong, strong gravitational pull—seeing Ram in her maid outfit intensely drew something out from within.

And the answer to that gravitational pull appeared immediately from behind Ram. It was—

"I apologize for the delay in joining you, Lady Emilia."

Saying this, standing next to Ram was a blue-haired maid, dressed in the same maid uniform, performing a graceful and poised curtsy. Of course, it was a familiar face. However, as far as Petra knew, she shouldn't have been able to wear the maid uniform and perform perfect etiquette. No, that's not right either.

Once again, again, and again, her perception was corrected. No, that's not right. It was unthinkable that she lacked the knowledge or manners of a maid. After all, in this world, she was the first to teach Natsuki Subaru and Petra, who was still a village girl, the proper impression of a maid. Petra Leyte remembered this through the gravitational pull.

In other words, standing there was—

"That person... to reclaim Subaru-kun, allow Rem to offer her humble assistance."

Yes, it was Rem, the original all-purpose helpful maid of the Roswaal mansion, known for her polite yet sharp tongue, who declared this with her light blue eyes looking straight ahead.

NAME MAPPINGS:
クリンド → Clind
ペトラ → Petra
メィリィ → Meili
フラム → Flam
スバル → Subaru
ラインハルト → Reinhard
ガーフィール → Garfiel
エッゾ → Ezzo
ロム爺 → Old Man Rom
エミリア → Emilia
ナツキ・スバル → Natsuki Subaru
フェルト → Felt
エルザ → Elsa
フレデリカ → Frederica
オットー → Otto
ラム → Ram
レム → Rem
ロズワール → Roswaal
アル → Al
ロイ → Roy
スピカ → Spica
小紅蠍 → Little Red Scorpion
パトラッシュ → Patrasche
嫉妬の魔女 → Witch of Envy
剣聖 → Sword Saint
死者の書 → Book of the Dead
徽章 → Insignia
フルフー → Furufu
ボルカニカ → Volcanica
暴食 → Gluttony
『名も無き星の光』 → Light of the Nameless Star
『引力』 → Gravity
ヴォラキア → Vollachia
オド・ラグナ → Od Lagna
王都ルグニカ → Royal Capital Lugnica
モゴレード大噴口 → Grand Mogolade Geyser
プレアデス監視塔 → Pleiades Watchtower
トンチンカン → Tonchinkan

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